農水省が立ち上げた「農業版価格ドットコム」失敗。サービス完全終了、運営会社2021年から債務超過・解散

資材価格の比較サービス「アグミル」ひっそり終幕　利用低調で

競争原理を働かせて資材価格を引き下げる――。農水省が立ち上げた資材価格の比較サービス「アグミル」が関連サービスを含め完全に終了することが分かった。農協改革の一環で２０１７年に５０００万円の予算を投じて開発された。鳴り物入りで始まったが利用は広がらず、運営会社のリデンは２１年から債務超過に陥っていた。

農協改革の議論が進んだ当時、政府は国内で販売される資材が諸外国より高いことを問題視。自民党農林部会長だった小泉進次郎氏が対策として提案したのが農業版「価格ドットコム」だ。複数の事業者から資材の見積もりを取ることで競争を引き起こし、価格を下げる狙いだった。

提案を受けて作られたアグミルは、①農家が買いたい資材の条件を登録②複数業者から見積もり・提案が届く③価格などを比べて最も有利な条件の業者から買う――仕組み。取引が成立すると運営企業に手数料が入る仕組みだが、多くが②までの利用にとどまり、「取引件数はそこまでなかった」（同省技術普及課）。

同省からアグミルを譲渡されたリデンは、低調な取引を増やそうと作業記録アプリなどのサービスを拡充していたが軌道に乗らず、負債が膨らんでいた。同社は資材価格の比較サービスは２４年３月に先んじて終了。２６年１月に全サービスを終了し、２月に解散する。

農水省は「資材を自分の目で確かめて購入する、農家の商習慣は変わらなかった」とみる。一方、現在は農業資材の価格比較ができる類似サービスがあり、「農家が資材購入時に価格交渉をするようになった感覚はある」と一定の効果はあったと強調する。

ただ、同省の農業物価統計によると、農業生産資材の価格はアグミルが立ち上がった１７年以降もほぼ一貫して上昇。本来の目的だった資材価格引き下げにはつながっていない。
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