アパートで隣に女の子が引っ越してきたときにすること

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困窮し東京離れる団塊世代　料理人コウイチさんの老後

東京都で生活保護を受けて施設に入ろうとすると、その多くが都外に送り出される。11年前、群馬県渋川市の高齢者施設「静養ホームたまゆら」で入居者10人が亡くなった火災で明らかになった実態は、今もまったく変わっていない。独居、貧困の高齢者は、この国の首都に増え続け、「現代のうば捨て山」とすら言われた措置は今後も続く見込みだ。

　東京都内では、身寄りがなく、生活保護を受けて暮らす高齢者向け施設の絶対数が足りない。その受け皿になっているのは、ほとんどが関東近県にある施設だ。6年前の調査では、高齢者施設に住む生活保護受給者の7割超が都外の施設で暮らしており、現在でも同様だとみられている。
都内の病院に入院していたコウイチさん（74）は昨年8月、墨田区役所の紹介で、群馬県太田市の郊外にあるサービス付き高齢者向け住宅（サ高住）に移り住んだ。その理由をこう語った。
「東京は家賃が高いからほかのところで探す、と言われて」
「東京から近い」という話だったが、これまで訪れたこともなく、不安がないわけではなかった。「『寒いところだよ』と言われたけど、生きていかないといけないし、死ぬほどの寒さじゃないだろうと。雨風がしのげれば、何とかなるだろうと観念するしかなかった」
福島県に生まれ、高校を中退して神奈川県の料理店で修業した。その後独立し、千葉県境に近い東京・小岩ですし店やカレー店、喫茶店、ピンサロなどを営んだが、バブルがはじけると経営が悪化した。
高齢者の貧困が深刻化しています。後半では、生活保護受給者の特養ホーム入所の実態を探ります。
孤独死の部屋の隣でまた孤独死山谷にみる東京の未来
店をたたんでスーパーに勤め、65歳まで働いた。退職金はわずか7万円で貯金はなく、墨田区役所に駆け込んで生活保護を申請した。しばらくアパート暮らしをしていたが、自転車で転倒事故を起こして入院、手術した。
足が不自由となって一人暮らしは難しく、介護が必要と墨田区が判断し、現在のサ高住を紹介された。
若い頃に結婚した女性との間に娘をもうけたが、すぐに離婚。60代になってからも同居する女性がいたが、今では誰とも連絡を取っていない。
不自由になった両足のリハビリは毎日欠かさず続けているものの、加齢のせいもあり、最近は目の焦点が合わない。テレビもはっきりと見えなくなり、楽しみはラジオと、たまのカラオケだけだ。
今の住まいは想像以上に快適で、ここに骨をうずめてもいいと感じるようになった。「お世辞じゃなくて、職員はみんな気持ちが優しい。こんなによく面倒を見てくれるのは、生活保護を受けて初めてだ」
それでも思い出すのは、東京の日本料理店の厨房（ちゅうぼう）で多忙を極めていた時のことだという。鮮魚の姿造りが得意だった。思い出話をしながら、流れ出る涙をぬぐった。
都内の特養ホーム、入所待ちは約2万9千人
墨田区の生活保護費は単身高齢者で月13万円ほど。「この金額で入れる区内の有料老人ホームはない」と区の生活福祉課担当者は言う。そのため、群馬や茨城など都外の高齢者住宅に頼らざるを得ないのが現実だ。特別養護老人ホームは比較的低額だが、都内の入所待ちは約2万9千人に上る。
コウイチさんの場合、要介護度は低く、特養への入所も難しかった。現在暮らしている住宅は個室で約15平方メートル。生活相談や職員の見守り、3食が付いて月15万円ほど。定員22人は満室で、そのうち7人が都内から紹介を受けて入居した。いずれも生活保護受給者だという。
住宅を運営する「ワールドステイ」によると、都内に住んでいた高齢者の多くは都内の特養ホームを希望し、空きを待つ間の一時的な住まいとして入る人も多いという。
施設管理者の猿山忍さんは「なるべく本人の希望に沿った接し方をするよう心がけている」と話す。同社広報担当の中野正博さんは「今でも『うば捨て山』と言われることがある。最初から進んで入ろうとする人なんてそうはいない」と話す。
都の2014年9月現在の調査によると、都内の自治体から生活保護を受けて高齢者施設に入居する5140人のうち、都外の施設で暮らしていたのは3820人。都内は1320人で、4人に3人が都外の施設に入所していた計算になる。
その後、同種の調査は実施しておらず、詳しい現況は分かっていない。だが墨田区によると、傾向は変わっていないという。今年1月1日時点の区のまとめでは、生活保護を受ける高齢者473人のうち、308人が都外の施設に入居している。群馬県が最多で117人、茨城県112人、埼玉県42人と続く。