オリンピック終わった後の新国立競技場の使い道を考えてくれ

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コロナ五輪、内外にリスク

東京五輪が８日閉幕した。１７日に及んだ大会期間中、新型コロナウイルスの国内の新規感染者は１７万人超増え、医療を圧迫した。五輪選手団と一般の人たちを分離した「バブル方式」。その内側と外側で何が起きていたのか。

　■隔離の選手村、スタッフへの対策ほころび

　「陽性率の低さは安全性が確保された一つのエビデンス（証拠）」

　７日にあった東京五輪大会組織委員会の記者会見。中村英正・運営統括は、選手や大会関係者らに延べ約６０万件の検査をし、陽性者は１３８人（６日時点）、陽性率は０・０２％だったことを挙げて、そう述べた。

　組織委によると、７月１日以降、バブル内外で資格認定証を持つ４３０人（８日現在）が陽性と判明した。内訳は組織委の業務委託先の業者が２３６人で最も多く、大会関係者が１０９人、選手が２９人、メディアが２５人、ボランティアが２１人、組織委職員が１０人だったが、２１棟の居住棟にベッド１万８千床がある選手村の居住者に限ると感染者は３２人（８日現在）。医療機関に入院したのは３人だった。来日しながら陽性判定を受けたり、チームメートが陽性となったりするなどして出場できなかった海外選手が１９人いた。クラスター（感染者集団）は大会終盤にギリシャ選手らの例が確認されたが、大会関係者は「選手村固有の感染ではなく、経路もわかっている」と明かす。

　組織委幹部は「先手先手の対応」が功を奏したとみる。保健所機能を強化し、陽性者が出ると、濃厚接触者の疑いがある人を洗い出して個室に移動させ、選手村での隔離が難しい場合は、村外に用意したホテルに移動してもらうなどの対応も徹底したという。

　ただ、ほころびもみられた。国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）や組織委は、観光目的で外出したジョージアの柔道選手ら８人の資格認定証を剥奪（はくだつ）。別の８人の資格認定を一時停止し、１６人を厳重注意とした。

　村内で働いていた女性は、各選手の振る舞いに差があったと証言する。黙々と１０分で食事を終える選手がいる一方、２０人ほどで盛り上がるチームもあった。村内で酒盛りをしているのも何度か見かけたという。

　組織委幹部は「プレーブックは性善説に立っており、すべてを取り締まるのは難しい」と語る。

　村内の総合診療所で働いたメディカルスタッフの男性は、ボランティア用のシャツで来てそのまま活動する人など、バブル外から来る人への対策が不十分だったとみる。実際、アルバイトの中には勤め先の指示で４日に１度の定期検査が始まったのは開幕から１週間ほど経ったころだったと証言した人もいる。

　この男性スタッフは水際対策についても、空港内で選手団や大会関係者と一般入国者の動線が交わるなど、不備があったと指摘。「選手村での対策は成功したといえるレベルだが、全体の流れを見ると穴はあった」とし、バブル内外に感染が拡大するリスクはあったとの見方を示した。（遠藤隆史、伊木緑）

　■病院に「三重苦」、開幕日には人出

　バブルの外は、感染の急拡大に見舞われた。

　「ピコーン、ピコーン」

　７日夜、横浜市港北区にある横浜労災病院のコロナ病棟。ナースステーションでは、入院患者の血中酸素が減っていることを知らせる警告音が頻繁に鳴っていた。テレビで五輪を見て、興奮して息切れを起こす患者もいる。「なぜいま五輪なのか、と思います」。看護師の一人はそう言った。

　中等症から重症の患者のために３２床を用意しているが、３１床が埋まっている。

　救命救急センターの竹下諒医師（３４）は、首から五輪のＩＤをぶら下げ、病院の隣にある日産スタジアムへ向かった。男子サッカーの決勝で救護を担うためだ。「サッカーは好きだし、五輪の開催も否定しない。ただ、病院が大変な時に、『行っていいのかな』という思いはあります」

　２日前、救急外来（ＥＲ）の当直に入った。コロナ患者の受け入れを要請する電話が、朝までに２０件あった。「異常事態だ」と感じた。

　要請が重なる場面が何度もあった。救急から容体を聞き取り、より重篤な患者を優先して受けた。「断った患者には、何とか家で頑張ってほしいと祈る気持ちでした」

　コロナ対応、ワクチン接種に加え、五輪への協力を求められた病院では「三重苦」が深まった。東京都墨田区にある東京曳舟病院は、医師３人と看護師３人を計４日間、競技会場に派遣。６人は休日を返上して医務室に入った。三浦邦久副院長は「五輪を手伝っても代休が取れる状況ではなく、スタッフは疲弊している」。