反社会的な男になろうと思う。具体的になにすればいい？

https://mainichi.jp/articles/20180528/ddm/002/070/053000c

具体的な説明の力＝山田孝男

生々しい体験を踏まえて語られる具体的な説明には強い説得力がある。

　抽象的で紋切り型の否認には真実味がない。

　その対比、落差がよく見えた１週間だった。

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　２２日、反則プレーを謝罪した日大アメリカンフットボール部員の記者会見（日本記者クラブ）が、ほぼすべてのテレビ、新聞のトップニュースになった。

　対戦相手の選手を負傷させた＜悪質タックル＞はなぜ起きたか。日大当局が何も説明しない中、実行行為者の自主的会見に関心が集まった。この会見が、ふだんこの競技に関心を払わない人々にまで強い印象を与えた理由は、メッセージの具体性にあった。

　反則の前後の経緯、出来事と心境の変遷が細部まで活写された。時系列に沿って眺めても矛盾がなく、映像やグラウンドでの目撃談と一致していた。

　聞いている側が、この部員の目から見た事件の流れを、映画を見るようにイメージできる。そういう説明だった。真に迫り、訴える力をもっていた。

　飾らぬ語り口と率直な応答ぶり。全日本級の資質をもちながら、「アメフトを続けていく権利はないと思っている。やるつもりもない」と言い切った潔さ。ベンチの指示について語ったが、マスコミに繰り返し挑発されても他者への批判を差し控えた抑制。

　若い話し手の品位と器量が納得感を補強した。

　遅れて会見した監督、コーチは、問われるまま加害選手の胸中を推し量ってみせたが、＜自分から見た全体像＞の率直な表明が決定的に欠けていた。

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　２１日、加計（かけ）学園の獣医学部新設問題をめぐり、新たな展開があった。

　２０１５年２月２５日、学園理事長が首相官邸を訪ねて構想を説明した－－。学園のこの報告を書き留めた愛媛県職員作成のメモが露見したのである。構想を初めて知ったのは１７年１月２０日という従来の首相の国会答弁と矛盾する。

　この点を突かれた首相は面会を否定、官邸の入邸記録は廃棄するので確認できぬ－－と説明した。究極の紋切り型である。

　なるほど、氏名と面会先を記す手書きの面会票は廃棄するだろう。だが、データ自体は残すに決まっている。開示して明確に否定しないのは、非公式の訪問者に対する詮索を封じたいからだと推察する。

　獣医学部構想など知らなかったという首相答弁には無理がある。証拠が出るたびに紋切り型で逃げる悪循環を断ち、旧答弁を撤回して具体的に、順序立てて説明すべきだろう。

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　森友学園の問題でも新しい動きがあった。

　２３日、財務省が学園との土地取引の交渉記録（Ａ４判で９５７ページ）を国会に提出した。前理財局長が「廃棄し、残っていない」と答えた資料である。

　アッと驚く新事実が飛び出したわけではないが、ある資料を「ない」と言い張り、決裁文書さえ改ざんする財務省の病があらためて浮かび上がった。

　副総理兼財務相は「きちんと対応することで引き続き職責を果たす」と語ったが（２５日）、責任者の厳重処分と財務相の潔い進退を重ねて求めたい。

　米朝の劇場型の駆け引きが続いている。世界中で民主主義が安定を失っている時代だからこそ、首相、財務相は国民との対話に努めるべきではないか。よい統治が国力を高める。