「川崎市は治安が悪い」って本当？　データを分析して分かった風評の実態と、「犯罪と経済」の相関関係

〈データで斬る 川崎〉（上）

　川崎ってどんな街なんだろう─
─。ある時、川崎支局員の2人が、そんな疑問を口にした。しかし、答えは出ない。では、分析してみようか。統計分析の専門的資格を持つ記者と、気象データアナリスト記者が、統計データを基に川崎市の素顔を探ってみた。
◆犯罪発生数が多い区は？
　「川崎は治安が悪い」とよく言われる。横浜市出身の記者も幼少期に「川崎は怖いところ」と思っていた。しかし、実際は全国20の政令市の中では人口あたりの刑法犯認知件数（犯罪発生数）は、下から数えた方が早い。県内で見ると確かに川崎区は刑法犯認知件数が多いが、それも「異常な多さ」というわけではない。データで「風評」の実態を確かめてみた。
　県警の犯罪統計を基に、2024年の犯罪発生数（人口10万人当たり）を県内市区町村別で調べた。川崎市内は、川崎区が1138件で県平均（496件）の2.3倍。幸区は県平均の1.2倍ほどで、残る5区は県平均より少なかった。もっとも、川崎区が県内最多というわけではなく、横浜市西区（1374件）や同市中区（1156件）の方が多い。
◆なぜ？犯罪と「純付加価値額」の関係は
　「治安が悪い」という川崎の印象は、川崎区に引っ張られている可能性が高い。同じ川崎市内なのに、区によって犯罪発生数が異なるのはなぜか。関係がありそうなデータを調べたところ、経済センサスに掲載された市区町村別「純付加価値額」と強い相関関係が見られた。純付加価値額とは、企業活動による生産額から費用を引いたもの。経済活動が活発な地域ほど犯罪が多いことになる。
　川崎区は東京に近く、オフィスや工場、飲食店が多い経済都市。横浜市の西区や中区も同様だ。お金や人の流れが多ければ、それだけトラブルも増えると推定できる。川崎区だけ異常に犯罪が多いわけではなく、統計上は経済活動の活発さで説明がつく。
　県警の統計では、川崎区で目立つのは自転車盗。窃盗のうち53％を占め、県平均の36％を大きく上回る。一方、殺人や強盗、傷害などの「凶悪犯」と「粗暴犯」を合わせた割…(以下有料版で，残り 862文字)

東京新聞　2025年5月1日 07時31分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/402082