もんたよしのりさん追悼秘話　連絡ミスでライブ来られず代役には林家小染さん、観客席から空き缶が投げ込まれる幕切れ

桂春蝶の蝶々発止。
もんたよしのりさん追悼秘話　連絡ミスでライブ来られず代役には林家小染さん、観客席から空き缶が投げ込まれる幕切れ

2023.10/31 15:30

桂春蝶

シンガー・ソングライターの、もんたよしのりさんが７２歳で亡くなりました。「ダンシング・オールナイト」（１９８０＝昭和５５＝年発売）、哀愁漂ういい曲でしたね。もんたさんについて、「昭和だなぁ」と感じられるエピソードがあるので、哀悼の意を込めて書かせていただきます。

まず、関西のある大物ラジオパーソナリティーＡさんに次のような話を聞きました。

もんたさんが売れまくっていたころ、大阪府豊中市の千里中央にあった「セルシー広場」で、もんた＆ブラザーズの野外ライブが企画されました。大手飲料メーカーがスポンサーでした。

ところが、間に入った代理店の大ミスで、もんたさんの事務所にまったく連絡が入っていなかった。こんなの、当時でも絶対にあり得ない話です。当たり前ですが、開演の時間になっても、もんたさんらは来ません。だって、連絡が入っていないんですから。

その時、Ａさんは司会でした。必死に「今、もんたさんらは、こちらに向かっております！」「今しばらくお待ちくださいませ！」などと１時間ほどつなぎましたが、約２０００人の観客の怒りはピークに。

「司会者下がれ！」「もんた出せ！」などと、シュプレヒコールが起きる始末（苦笑）。

スポンサーの飲料メーカーは、社長が舞台に上がっての平謝り。タダで飲み物を配ってなだめるも、当時の大阪のお客さんは飲み物ごときで収まりません。

そして！　舞台裏ではついに、「もんたさんは来られない」とのファイナルアンサーが届くのです。代理店とスポンサーが緊急に出した案は、「もんたさんに代わる、超スペシャルゲストを呼ぶ」というものでした。

司会のＡさんが再度登壇して、「すいません！　皆さま、もんたさんは今日は来られません！」と切り出すと、客席の殺気は尋常ではなかったそうです。

「ナメとんか！　ホンマ、ナメとんか！　ワレー！！」

その空気を収めるべく、Ａさんはこう続けます。

「その代わり、超スペシャルゲストがいまこちらに向かっております！　すごい代打の人です！」

「ホンマかボケー！　代打て、川藤ちゃうやろな！？　こらぁ！」

待つこと、さらに１時間。

「あっ！！　ゲストが今到着したもようです！　この方です、どうぞ！」

舞台袖から出てきたのが、何と！　先代の林家小染さん（爆笑）。観客席から、小染師匠とＡさんに空き缶が投げ込まれるという幕切れだったそうです。

その後、私がラジオ局で、もんたさんにお会いしたとき、「あの話は本当ですか？」と聞くと、もんたさんは「アハハ…。すごいこと知ったはりますねぇ。あの後ね、代理店の人ら２０人くらい丸刈りにしたはったわ」とのお答え。

ことの顚末（てんまつ）が「丸刈り」というのも昭和ですなぁ。また一つ、昭和は遠くなりにけり。もんたさんが生きた、あの時代は輝いていましたな…。心からご冥福をお祈りいたします。

https://www.zakzak.co.jp/article/20231031-53TD26KS4BM5DH2DRE5SUXNY6U/3/