「学校トイレに無料の生理用品」活動　反響続々（毎日）

「学校トイレに無料の生理用品」活動　「悩み」可視化される実感

　小・中学校、高校、大学のトイレに無料の生理用品を設置する活動が注目を集めている。目的は、経済的な理由で、また自分の性に悩んでいて購入できない人、手元にないことで不安を感じる人などの支えになること。さらに、社会でタブー視されがちな生理に関する必要な情報の共有を拡充することも目標に掲げる。この思いを胸に、生理用品設置を要請する活動を広める団体、SUFPのメンバーに話を聞いた。

　SUFP（Student Union for Free Periods）は、学校に生理用品を設置したいと考える学生たちが集うコミュニティーとして、今年4月に設立された。高校生以上の参加者それぞれが設置に向けてのアイデアを持ち寄り、ノウハウを共有している。

　設立母体は、生理用品を消費税の軽減税率の対象にしたいという署名活動から始まった「＃みんなの生理」、そして国際基督教大（ICU）を拠点にジェンダーについて考え、行動する「ICU PRISM」の2団体だ。SUFPには現在約20の団体が参加し、およそ40人の会員が所属する。「高校生が団体を作って参加してくれたことに驚いた。会員は皆、高い志を持って取り組んでおり、大学生からは母校の高校に設置したいという声も多く上がっている」と、ICU PRISMメンバーで上智大2年の稲井清香さん（19）は語る。

　2019年設立のICU PRISMは今年2月、ICU内の3カ所のオールジェンダートイレ（すべての性別の人が入れる個室トイレ）に生理用品を設置した。設立当初、アンケートで学生・教職員の需要を探ったところ、生理用品が無くて困ったことがあるという声が多く上がった。「生理用品に関する悩みがなかなか可視化されていなかったことに気づいた」と同大3年の加美山紗里さん（20）は話す。設置後、「助かった」という反響が多くあり、生理用品を寄付してくれる動きもあったという。

　20年設立の「＃みんなの生理」は、首都圏の市区町村に、公立の小・中学校のトイレに生理用品を設置してもらえるよう、要請を出している。そもそもなぜトイレに設置するのか。同団体メンバーでICU2年の鈴木りゆかさん（21）は、「例えば、生理用品を学校の保健室に取りに行くことは、他者がいて心理的にハードルが高く感じる人もいる。だからこそプライバシーを守るために、トイレに設置したい」と話した。

　設置要請の活動を進めていく中で「生理に関する悩みについて、話したくても話せなかった人がたくさんいたことに気づいた」と「＃みんなの生理」メンバーの福井みのりさん（24）。また鈴木さんも、「人がそれぞれ持つ生理に関する悩みは、声を上げる人の数が多くなればなるほど、口にしづらかった人も声を上げやすくなる」と、活動の波及効果を語った。

　一方で役所との話し合いでは、「生理をよく理解していない世代にいたずらをされないか」と指摘を受けたという。「設置するにあたって、周りが受け入れるために必要な教育がある」と鈴木さんは感じている。

　最近、新型コロナウイルス禍で経済的に困窮する人が急増したことを背景に、生理用品の購入が困難な状況に陥る「生理の貧困」の話題が各メディアで取り上げられている。この動きに、福井さんは「生理用品が十分に入手できない実態は、コロナなどセンセーショナルな出来事がないと取り上げられない感じがする。でも、生理の貧困はそれ以前からあり、対策も一時的なものではなく、どう大きなムーブメントにしていくかが重要だ」と指摘する。加美山さんも、「やっと可視化されただけではあるが、一つの大事なプロセスだ」と話した。

　また稲井さんは「生理に関する問題にはさまざまな切り口がある。貧困など特定の話題だけに着目してほしくない」とも話す。鈴木さんは、生理がある人の性自認が女性とは限らないため、「生理＝女性」という切り口だけで語ると、生理用品を手にしづらくなる人もいるのではという懸念も抱いている。また加美山さんも、生理の経験は人によってさまざまであることも意識してほしいという。

　一方で、福井さんは「生理について話しやすくなっている良い変化はあるが、話したくない人もいる。多様な意見に配慮しながら、話したいときに話したいことを安心して打ち明けるには、どういう取り組みが効果的なのか、考えなければいけない」と指摘する。（後略）

毎日新聞 2021/5/19 06:00（最終更新 5/19 06:00） 2015文字
https://mainichi.jp/articles/20210518/k00/00m/040/174000c